コンタクトレンズ装用時の目の乾きやゴロゴロ感などが気になり、「目薬を使いたいな……」と思ったことはありませんか。
たしかに、目の不快感は目薬の使用で改善される場合が少なくありません。しかし、コンタクトレンズ装用時には専用の目薬を使用しないと、レンズが変形したり目に障害が生じたりするおそれがあります。
それでは、コンタクトレンズ装用時に目薬を使いたい場合はどういうことに気を付ければよいのでしょうか。
今回は、コンタクトレンズ装用時に専用の目薬を使わなければいけない理由とレンズの種類に応じた目薬の選び方、正しい目薬の使い方や注意点などを詳しく解説します。
コンタクトレンズ装用時には、専用の目薬を使用しなければなりません。なぜなら、コンタクトレンズ用の目薬と普通の目薬では、使用の目的や対象となる症状、成分が異なるからです。
コンタクトレンズ用の目薬は、コンタクトレンズ装用時の目の乾きやゴロゴロとした不快感をやわらげたり、涙液の代わりに目を守ったりするのがおもな目的です。
また、コンタクトレンズの装用を前提として製造されているため、レンズに悪影響をおよぼす成分や眼障害をまねくおそれのある成分は含まれていません。
そのため、コンタクトレンズ装用時にも安心して使用できます。
一方、コンタクトレンズ用ではない普通の目薬は、目の充血や疲れ目、かすみ目、目のかゆみなどの症状を改善するのがおもな目的です。
また、普通の目薬はコンタクトレンズの装用を前提としていないため、目やレンズに悪影響のある防腐剤や、血流悪化をまねく血管収縮剤などが含まれていることもあります。
このようなことから、コンタクトレンズ用の目薬と普通の目薬は「まったく別のもの」だと考えておくべきでしょう。
コンタクトレンズ用の目薬と普通の目薬がまったくの別物とはいえ、「使えないわけではないでしょう?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、普通の目薬の多くは製品の劣化を防ぐために防腐剤が含まれています。
そして、コンタクトレンズを装用した状態で普通の目薬を使用すると、防腐剤がレンズに吸収されて目に長くとどまることになるため、角膜障害が生じることがあります。
さらに、防腐剤の影響でコンタクトレンズが変形・変色するリスクも否定できません。
また、血管収縮剤が配合されている目薬を使うと、目の血管が収縮して血流が悪くなり、角膜(黒目の部分)に十分な酸素が供給されなくなるおそれがあります。特にコンタクトレンズ装用時は角膜の広い範囲をレンズで覆うことになるため、そもそも目の酸素が不足しがちです。目の酸素不足が続くと、充血や目の乾燥のほか、眼病などをまねくこともあるため、コンタクトレンズ装用時に血管収縮剤配合の目薬を使うのは控えなければなりません。
特に、ソフトコンタクトレンズは水分を吸収しやすく目の広い範囲を覆うため、レンズ装用時の目薬の使用には注意が必要です。
それでは、コンタクト装用時に使える目薬はどのようにして選べばよいのでしょうか。
実は市販の目薬の場合、コンタクトレンズ装用時に使えるかどうかはたいていパッケージで確認できます。パッケージには対応しているレンズの種類も記載されているため、購入前に必ずチェックしましょう。
ハードコンタクトレンズには水分が含まれていないため、ソフトコンタクトレンズほど目薬に含まれる防腐剤や他の有効成分の影響を受けないとされています。しかし、酸素透過性のハードコンタクトレンズでは、ソフトコンタクトレンズと同様に防腐剤がレンズに吸着することもあるため、「どの目薬でも大丈夫」というわけにはいきません。
したがって、ハードコンタクトレンズを使用している場合は「防腐剤フリー」の目薬を選びましょう。パッケージに「ハードコンタクトレンズ用」「すべてのコンタクトレンズ用」と記載されているものであれば、より一層安心です。また、ハードコンタクトレンズ装用時でも、ソフトコンタクトレンズに対応している目薬なら使用できます。
ソフトコンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズとは異なりレンズ中に水分を含んでいるため、防腐剤を吸着しやすくレンズの変形・変色のリスクもあります。
したがって、ソフトコンタクトレンズを使用している場合は、「すべてのコンタクトレンズ用」あるいは「カラーコンタクトレンズを除くすべてのコンタクトレンズ用」の表示がある目薬を選んでください。
なお、「ハードコンタクトレンズ用」の目薬はソフトコンタクトレンズに対応していないことが多いため、使えません。
カラコンは、ソフトコンタクトレンズの一種です。そのため、「ハードコンタクトレンズ用」の目薬は使えません。また、ソフトコンタクトレンズに使用できる目薬でも、カラコンに対応していない場合があるため注意が必要です。
このようなことから、カラコンを使用している場合は「すべてのコンタクトレンズ用」の表示がある目薬を選んでください。
コンタクトレンズの種類に応じた目薬の選び方がわかったら、コンタクトレンズ用目薬の正しい使い方も理解しておきましょう。
目薬を正しく使うことは、目やコンタクトレンズのトラブルを予防するためにとても重要です。コンタクトレンズ装用時に普通の目薬を使う方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
コンタクトレンズ装用時の目薬の使い方は、以下のとおりです。
1. まず、石けんやハンドソープで手指を洗ってください。
手の雑菌を洗い流して、目薬の汚染を防ぎましょう。
2. 下まぶたを軽く引き下げ、コンタクトレンズの種類に応じた目薬を点眼します。目薬の量は1滴で十分です。
このとき、点眼容器が目やまつ毛などに触れないように気を付けてください。
3. 目薬をさしたら、しばらく目を閉じて目薬が流れてしまわないようにしましょう。
点眼直後にまばたきをすると目薬が流れてしまうため、静かに目を閉じてください。
4. 目薬が目からあふれ出た場合は、清潔なコットンなどでふき取りましょう。
このようにすれば、目薬による肌トラブルを予防できます。
普通の目薬を使う場合は、レンズの変形や変色、眼障害などを防ぐために、あらかじめコンタクトレンズを外してください。
そのうえで、上記1~4の手順にしたがって目薬をさしましょう。
ただし、目薬をさし終わってすぐにコンタクトレンズを装用するのはNGです。目の表面に残っている目薬の成分がコンタクトレンズに吸着して、レンズや目に悪影響をおよぼすおそれがあります。
このようなリスクを避けるために、普通の目薬を使った場合は5分以上の間隔を空けてコンタクトレンズを装用するようにしてください。
最後に、コンタクトレンズを使用している方が目薬を使うときの注意点を解説します。
コンタクトレンズ用の目薬は多数販売されていますが、ソフトコンタクトレンズやカラコンに使える目薬は限られています。パッケージを確認して、使用しているコンタクトレンズの種類に応じた目薬を購入してください。
目薬を使いすぎると、目を守っている成分や栄養分などが流されてしまうため、目に悪影響をおよぼしかねません。また、頻繁に目薬をさすと、目薬の成分が目に残って角膜に障害が生じるおそれもあります。
このように、目薬を使いすぎると目の健康状態を悪化させる場合もあるため、用法用量を守って使用することを心がけてください。
「冷所保存」など特別の指示がない限り、目薬は直射日光の当たらない涼しい場所で保管しましょう。専用の遮光袋がある場合は、遮光袋内で保管してください。
なお、コンタクトレンズ用の目薬は防腐剤フリーのものも少なくありません。開封したら、なるべく早めに使い切るようにしましょう。開封してそれほど日数が経っていない場合でも、目薬に浮遊物やにごりなどがある場合は使用を中止して廃棄してください。
コンタクトレンズをいったん外して目薬をさし、そのあと再びレンズを使用する場合は、必ずレンズを洗浄してから装用してください。汚れたコンタクトレンズを装用すると、感染症などの原因になります。
なお、ワンデータイプのコンタクトレンズは一度外したら再装用できません。目薬をさすためにレンズを外したらすぐに廃棄して、新しいレンズを装用してください。
コンタクトレンズ装用時に目薬を使いたい場合は、レンズの種類に応じた目薬を使わなければなりません。種類の合っていない目薬や普通の目薬をレンズ装用時に使用すると、レンズの変形・変色や眼障害をまねくおそれがあります。
市販の目薬の場合、コンタクトレンズ装用時に使えるかどうかはたいていパッケージに記載されています。わからない場合は、薬局の薬剤師などに相談してください。
なお、目薬の使用に不安がある場合は、定期受診時に目の状態に応じた目薬を処方してもらいましょう。目とレンズに合う目薬を適切に使用すれば、より快適にコンタクトレンズを使用できます。
公開日 2023/5/31