コンタクトレンズは「ハード」と「ソフト」の2種類があります。両者の違いは硬さだけではありません。それぞれメリット・デメリットがあるため、目の健康や快適性のためには自分に合うタイプを選ぶことがとても大切です。
そこで今回は、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズの特徴やメリット・デメリットを徹底解説します。どのような方に向いているかも紹介するため、医師にすすめられたレンズタイプに納得がいかない方も、ぜひ参考にしてください。
最初に、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズの特徴や違いを知っておきましょう。
ハードコンタクトレンズは、その名のとおり「硬い」レンズで、水分を含まないプラスチック素材で作られています。レンズ直径は角膜(黒目)より小さく、動きが良いのが特徴です。
ハードコンタクトレンズには、長期間使用できるコンベンショナルレンズと、3ヵ月ごとに交換する定期交換タイプのレンズがあります。コンベンショナルレンズも定期交換タイプのレンズも繰り返し使用するため、デイリーケアと定期的なタンパク除去が欠かせません。
ソフトコンタクトレンズは、水分を含む軟らかいプラスチック素材で作られており、レンズ内の水分量や素材によってさらに細かく分けられます。レンズ直径が黒目より大きく、装用中にズレたり外れたりしにくいのが特徴です。
種類は、コンベンショナルレンズのほか、2週間あるいは1ヵ月ごとに交換する定期交換タイプ、使い捨てのワンデータイプがあります。ワンデータイプ以外はデイリーケアが必要で、コンベンショナルレンズとマンスリータイプのレンズはタンパク除去も必要です。
ここからは、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズのメリット・デメリットを詳しく見ていきましょう。まずは、ハードコンタクトレンズです。
ハードコンタクトレンズは、視力矯正力が高く、目に優しいという利点を備えています。
ハードコンタクトレンズは硬いプラスチック素材で作られているため、装用中もその形状が損なわれず、正確に光の屈折を調節できます。そのため、強い近視でも矯正可能です。
また、レンズと黒目の間が涙で満たされると黒目の表面の歪みが補正されるため、強い乱視や不正乱視(黒目の表面が不規則に歪み、複数の焦点ができる乱視)の矯正にも向いています。
多くのハードコンタクトレンズは、酸素透過性の良い素材で作られています。また、レンズ直径が小さく、空気中の酸素が瞳に直接届く構造になっています。レンズの動きが良いため、空気を含む涙の交換が妨げられないのも特徴の一つです。
このようなことから、ハードコンタクトレンズは瞳の酸素不足を防ぎやすいレンズといえます。
ハードコンタクトレンズは硬い素材で作られているため、形状が安定しています。裏返しになることはまずないため、裏表を確認しなくても装用可能です。
また、直径が黒目より小さいため、着脱の際にそれほど大きくまぶたを開く必要がありません。
そのため、ハードコンタクトレンズは比較的簡単に着脱できます。
ハードコンタクトレンズはまばたきのたびにレンズがよく動くため、装用中も涙の循環を妨げないという特徴があります。
また、レンズ内に水分を含まない素材で作られているため、長時間装用してもレンズから水分が蒸発せず、涙がレンズに吸収されることもありません。
このように、ハードコンタクトレンズは目が乾きにくいというメリットも兼ね備えています。
ハードコンタクトレンズは目が乾きにくく酸素不足になりにくいため、比較的長時間装用できます。
連続で装用できる時間は個人差が若干ありますが、目に問題がなければ14時間程度は連続装用が可能です。
目に優しいハードコンタクトレンズですが、硬さや大きさなどに関連するデメリットがいくつかあります。
ハードコンタクトレンズは直径が黒目より小さいため、装用時にレンズの縁部分(エッジ)が黒目に当たります。硬いレンズのエッジが黒目に直接触れるため、装用時に強い異物感を覚えることも少なくありません。
また、硬い素材でできているため、ゴミなどが入ると強い痛みを感じるのもデメリットといえるでしょう。
ただ、異物感などがあるときは目に何らかの問題がある場合が多いため、目の異常にすぐ気が付けるという点では必ずしも悪いことではありません。
ハードコンタクトレンズは装用時の異物感が強いため、初めて使う場合は慣れるまでに2週間ほどかかることもあります。
もっとも、慣れてしまえば異物感はほとんど気にならず、装用感はソフトコンタクトレンズとほとんど変わりません。
ハードコンタクトレンズは直径が小さく、まばたきのたびによく動きますが、わずかな衝撃(手が当たる、ちょっとした運動をする、など)でズレたり外れたりすることがあります。
そのため、ハードコンタクトレンズを装用しているときは、激しい運動は避けるほうが無難です。外れたときに備えて、メガネを用意しておくのも忘れないでください。
現在販売されているハードコンタクトレンズは、長期間使用できるコンベンショナルレンズと3ヵ月ごとに交換するタイプのみで、ワンデータイプなどはありません。
しかし、コンベンショナルレンズは寿命が長く2~3年は使えるため、コストパフォーマンスは抜群です。また、定期交換タイプは年に4回交換するだけなので、頻繁に購入しなくて済みます。
コンベンショナルレンズも定期交換タイプのハードコンタクトレンズも、繰り返し使用することが前提となっているため、デイリーケアと定期的なタンパク除去が欠かせません。
ですが、ハードコンタクトレンズはレンズ内に水分を含まないため、水道水を使ってケアができます。また、破損のリスクはゼロではありませんが、耐久性が高くソフトコンタクトレンズのように破れることはないため、ケアは比較的簡単です。
次は、ソフトコンタクトレンズのメリット・デメリットです。
ソフトコンタクトレンズは、軟らかくて目になじみやすいこと、種類の多いことなどがメリットとして挙げられます。
ソフトコンタクトレンズは水分を含む軟らかな素材で作られているため、付けた瞬間から目になじみやすいのが特徴です。
レンズ直径が大きくエッジが黒目に触れないため、異物感を覚えにくいのもメリットといえます。
ソフトコンタクトレンズは目になじみやすく異物感がほとんどないため、コンタクトレンズが初めての方でもストレスをあまり感じません。
個人差はあるものの、比較的短期間で快適に使えるようになることが多いようです。
ソフトコンタクトレンズは、軟らかな素材で作られているため目にフィットしやすく、運動などをしてもズレたり外れたりすることはあまりありません。
また、レンズ直径が大きく目の広い範囲を覆うデザインになっているため、ゴミなどの異物が入りにくいという利点もあります。
レンズの種類が豊富なのも、ソフトコンタクトレンズのメリットです。
長期間使用できるコンベンショナルレンズ、月に1回あるいは2週間に1回レンズを交換する定期交換タイプ、使い捨てのワンデータイプなど、使用頻度や予算に応じてレンズを選べます。
「普段は2ウィークタイプだけれど、旅行のときだけワンデー」など用途に応じた使い分けができるのも、ソフトコンタクトレンズの魅力です。
ソフトコンタクトレンズのなかには、デイリーケアが必要ない製品もあります。
使い捨てのワンデータイプのソフトコンタクトレンズは、使ったあとすぐに廃棄するため、デイリーケアは不要です。もちろん、ケア用品を用意する必要もありません。
また、2ウィークタイプのソフトコンタクトレンズは、適切なデイリーケアを欠かさず、汚れがない場合はタンパク除去をしなくても大丈夫です。
目になじみやすく初心者でも扱いやすいソフトコンタクトレンズですが、以下のデメリットには注意が必要です。
ソフトコンタクトレンズは目になじみやすく、異物感が少ないのが特徴ですが、装用感が良いために眼障害やレンズの異常に気付くのが遅れることもあります。
目のトラブルを放置すると悪化することもあるため、特に問題がなくても装用時間などのルールは守るようにしてください。また、3ヵ月に1回は眼科を受診して、目の健康状態を医師に確認してもらいましょう。
ソフトコンタクトレンズは、製品によって酸素透過性がかなり異なります。
従来からあるハイドロゲル素材のレンズは、含水率が高く、中心部分が薄いものほど酸素をよく通します。ただし、含水率の高いレンズは中心部分が厚くなる傾向があるため、選ぶ際には注意が必要です。
最近は、酸素透過性に優れたシリコーンハイドロゲル素材のレンズも多数販売されています。目の酸素不足が気になる場合は、こちらの素材を使っているレンズを選ぶとよいでしょう。
ソフトコンタクトレンズは大変軟らかく、気付かないうちに反転していることもあるため、裏表を確認してから装用しなければなりません。また、ソフトコンタクトレンズは直径が大きいため、装用時にまぶたを指で押さえて大きく開く必要があります。
ただ、裏表が簡単に識別できるマーク入りのレンズもあります。また、レンズの着脱は慣れてしまえばそれほど難しいものではありません。そのため、「レンズの着脱が難しい」という点は、慣れるまでの一時的なデメリットというべきでしょう。
ソフトコンタクトレンズは水分を含む素材で作られているため、長時間装用するとレンズから水分が蒸発して涙がレンズに吸収されます。特に、レンズ内の水分量が多い高含水レンズは大量の涙を吸収するため、目の乾燥に注意が必要です。
ソフトコンタクトレンズ装用時の目の乾燥が気になる場合は、目薬をさしたりまばたきの回数を増やしたりするなどして、目を潤すようにしましょう。また、エアコンなどによる空気の乾燥にも気を付けなければなりません。装用時間を短くして、早めにメガネに切り替えるのも良い方法です。
それでも目の乾燥が気になる場合は、含水量の少ないシリコーンハイドロゲル素材のレンズを選ぶとよいかもしれません。
ソフトコンタクトレンズの連続装用可能時間は、レンズの素材によって変わってきます。
ハイドロゲル素材のソフトコンタクトレンズは、酸素透過性があまり良くないため、連続で装用できる時間は12時間程度です。カラコン(カラーコンタクトレンズ)は製品により異なりますが、連続装用できる時間はクリアレンズより短めになります。
一方、酸素透過性の良いシリコーンハイドロゲル素材のソフトコンタクトレンズは、連続で14時間程度装用可能です。
なお、医師から装用時間について指示がある場合は、必ずその指示に従ってください。
それでは、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズのどちらを選ぶべきなのでしょうか。ここでは、それぞれのメリット・デメリットを踏まえたうえで、どのような方に向いているのかを紹介します。
ハードコンタクトレンズは矯正力が優れているため、近視や乱視の度数が強い方に向いています。硬い素材で作られていてピントが合いやすいため、細かな作業をする方にも良い選択肢となるでしょう。
また、レンズ内に水分を含まず、長時間装用しても涙を吸収しないため、目の乾きが気になる方にもおすすめです。
酸素透過性が高く目にかかる負担が少ないことから、毎日コンタクトレンズを使いたい方や長時間装用したい方にも向いています。
ソフトコンタクトレンズは水を含む軟らかな素材で作られており、目になじみやすいため、コンタクトレンズを初めて使う方に適しています。異物感が少ないため、ハードコンタクトレンズの装用感を好まない方にもおすすめです。
デイリーケアが面倒な方・苦手な方には、ケアの手間がないワンデータイプのソフトコンタクトレンズがよいでしょう。ケア用品が不要なので、旅行など荷物を減らしたいときにも大変便利です。
また、ソフトコンタクトレンズはズレたり外れたりするリスクが少ないため、運動をする方にも向いています。
ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズは、レンズそのものの硬さだけではなく、矯正力や目に対する優しさ、ケア方法などさまざまな点で違いがあります。見え方や使い勝手などに不満がある場合は、レンズの変更を検討してみるのもよいでしょう。
ただし、自己判断でコンタクトレンズを変えると、目のトラブルをまねくおそれがあります。変更・購入を希望する場合は眼科を受診して、医師に処方箋を発行してもらってください。また、特に気になる症状がなくても、目の健康維持のために3ヵ月に1回は眼科を受診しましょう。