しかし、目のトラブルが生じれば結果的に眼科を受診することになるのはもちろん、症状によっては、コンタクトレンズの装用が続けられなくなる可能性もあるでしょう。このような事態を避けるためには、眼科を受診して処方箋を出してもらうことが必要です。
そこで今回は、コンタクトレンズを処方箋なしで購入するリスクと、目の健康に配慮してコンタクトレンズを選ぶ方法などを紹介します。
はじめに、処方箋がなくてもコンタクトレンズが購入できる理由と、販売店で処方箋提出が求められる理由を解説します。
コンタクトレンズの処方箋とは、コンタクトレンズ購入のために眼科医が出してくれる文書のことで、正式には「コンタクトレンズ指示書」といいます。
処方箋には、おもに以下のような内容が記載されています。
□ 患者氏名
□ コンタクトレンズの製品名およびメーカー名
□ 規格(ベースカーブ(BC)、レンズ直径(DIA)、度数などのレンズデータ)
□ 数量
□ 装用方法(連日装用、終日装用など)
□ 発行日
□ 有効期間
□ 医療機関名および医師名、連絡先、捺印など
それでは、医師の発行した処方箋(指示書)がなくてもコンタクトレンズは購入できるのでしょうか。
もともとコンタクトレンズは、カラコンも含めて「高度管理医療機器」に分類されるものです。高度管理医療機器に分類されるものとしては、ほかにペースメーカーや人工呼吸器などがあります。
とはいえ、コンタクトレンズは医薬品ではないため、購入の際に処方箋を提出する必要はありません。したがって、処方箋なしで購入しても法的には問題ありません。
コンタクトレンズ販売店がレンズ購入者に処方箋提出を求めるのは、おもに以下のような事情からです。
度数や目の形状などのデータを正しく把握するため
広告などに惑わされず、目に合う適切なブランドのレンズを提供するため
眼病を早期に発見し、自己判断による不適切な使用を避けるため
レンズが目に合わないなどのリスクを減らし、交換・返品に対応するため
これらはすべて目の健康を守ることにつながります。
つまり、コンタクトレンズ販売店が処方箋の提出を求めるのは、購入する方の目の健康と真摯に向き合い、本当に目に合うレンズを提供したい、という姿勢のあらわれなのです。
ここからは、眼科を受診せずに処方箋なしでコンタクトレンズを購入することのリスクを具体的に解説します。
目の健康状態や生活環境に合わないコンタクトレンズを使用すると、目に傷がついたり、充血やかゆみなどの症状をまねいたりすることがあります。
また、レンズの度数が合っていないと目に負担がかかるため、眼精疲労などに悩まされることもあるでしょう。
視力低下などちょっとした見え方の変化に、病気が隠れているおそれもあります。
このような目のトラブルは眼科医でなければ診断できません。眼科を受診しなければ症状の早期発見もできないため、処方箋なしでのコンタクトレンズ購入は避けるべきです。
視力は、加齢や目を酷使する生活習慣などにより変化するものです。しかし、度数の変化に気付かず目に合わないコンタクトレンズを使い続けると、目が疲れやすくなって肩こりや頭痛、めまい、吐き気などを引き起こすおそれがあります。
したがって、こまめな眼科受診で視力の変化をチェックし、目に合うコンタクトレンズを処方してもらうことは、目の健康・体の健康のために大切なことだといえます。
眼科を受診せず処方箋なしでコンタクトレンズを購入すると、目に合わないレンズを購入するリスクが高まります。
例えば、レンズの素材や形状が目に合っていないと装用感が悪くなるため、短時間しか使用できません。目の痛みや乾き、異物感などでレンズがずれたりはずれたりする場合もあります。
さらに、眼科では左右の目にトライアルレンズを装用した状態で度数を調整してくれますが、自己判断で購入する場合はそのような細かな調整ができません。
特に、左右の見え方のバランスが悪いと遠近感が取りにくくなるため、とても危険です。
このように、処方箋なしでのコンタクトレンズ購入は、レンズの装用感や見え方にも影響をおよぼすおそれがあります。
処方箋なしでコンタクトレンズを購入するためには、製品の種類や度数などを自分で指定しなくてはなりません。
しかし、コンタクトレンズは種類が豊富で、度数などの数値も複雑です。これらをすべて間違えずに指定して希望のレンズを購入するのは本当に大変です。また、万が一間違えて購入しても、無料で返品・交換に応じてくれるとは限りません。
この点、処方箋があれば販売店が指示通りのコンタクトレンズを用意してくれるため、購入ミスのリスクを避けられます。
眼科を受診せず、処方箋なしでコンタクトレンズを購入するのが当たり前になってしまうと、購入に対する心理的なハードルが低くなります。しかし、高度管理医療機器であるコンタクトレンズの使用には、適切な管理が欠かせません。
したがって、目やコンタクトレンズに対する危機意識を維持するためにも、眼科を受診して処方箋を発行してもらうことはとても大切です。
目に合うコンタクトレンズを購入するためには、やはり眼科を受診して処方箋を発行してもらうことが重要です。
本章では、処方箋発行時に医師が確認している内容や、処方箋受け取りから購入までの流れを紹介しますので、安全・安心なコンタクトレンズの購入にお役立てください。
眼科医は、処方箋発行時の診察で患者さんの目がコンタクトレンズ装用に適する状態かどうかを確認します。特にていねいにチェックしているのは、目の健康状態や度数の変化、コンタクトレンズとの相性などです。
そして、検査や診断の結果をもとに、継続使用の可否やレンズ変更・度数変更の要否などを判断して処方箋を発行します。
処方箋を受け取ってコンタクトレンズを購入するまでの流れを、コンタクトレンズ専門店で購入する場合とインターネット通販で購入する場合に分けて解説します。
・コンタクトレンズ専門店で購入する場合
コンタクトレンズ専門店でレンズを購入する場合は、処方箋を持参してスタッフに渡せば希望の商品を購入できます。度数などもスタッフがしっかり確認してくれるため、購入ミスのリスクはほとんどありません。
ただし、処方箋には有効期間があります。処方箋をもらったらまず有効期間を確認して、早めに購入するようにしましょう。
・インターネット通販で購入する場合
インターネット通販を利用する場合は、処方箋に記載されているベースカーブや度数などのレンズデータを所定のフォーマットに入力して注文します。
ただし、入力ミスには十分に注意してください。サイトによっては返品・交換を受け付けていない場合もあるため、慎重にレンズデータを入力しましょう。
なお、インターネット通販を利用するなら、実店舗のあるサイトがおすすめです。実店舗があれば、コンタクトレンズや目にトラブルが生じた場合に対面で相談できるため、より安心です。
「コンタクトレンズを使用していても、特に異常や不都合がなければわざわざ眼科に行かなくてもいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、コンタクトレンズで目に傷がついても、自覚症状があるとは限りません。自覚がないまま、徐々に視力が低下してしまうこともあるでしょう。また、重大な眼障害の発見が遅れる可能性も否定できません。
コンタクトレンズ使用にともなう重度の眼障害は、定期検査の間隔が3ヵ月を超える方や、定期的な検査をほとんど受けていない方に多く発生しています。
こういったリスクを回避するためにも、定期的に眼科を受診して、コンタクトレンズの処方箋をその都度発行してもらうことをおすすめします。
コンタクトレンズは法律上処方箋がなくても購入できますが、自己判断での購入は目の健康だけでなく体の健康を害するおそれもあります。
快適で安全なコンタクトレンズ生活を送るためには、眼科を受診して処方箋を発行してもらうことが不可欠です。目の健康のために、コンタクトレンズ購入後も眼科で定期検査を受け、状態をチェックしてもらってから次のコンタクトレンズを購入しましょう。
メガネとは異なり、裸眼と同じ見た目でクリアな視界をキープできるコンタクトレンズ。これからコンタクトレンズを作りたいと考えている方も、現在使用している方も、ぜひ今回の記事を参考にしてください。