日本の子どもの近視は増加傾向にあり、文部科学省が令和4年度に実施した調査によると、裸眼視力が1.0未満の子どもの割合は、以下のとおりです。
幼稚園児:24.95%
小学生:37.88%
中学生:61.23%
高校生:71.56%
視力の悪い子ども全員が近視であるとは限りませんが、裸眼視力が1.0未満の子どもの8~9割は近視である可能性が示唆されています。視力が悪くなると黒板の文字がよく見えなくなるなど、学校生活にも支障が生じかねないため、早期の対処が必要です。
そこで今回は、近視で物が見づらくなる理由と近視のおもな原因および対策、子どもの近視をコンタクトレンズで矯正するメリットなどを解説します。
コンタクトレンズの種類ごとの特徴も併せて紹介しますので、お子さんの近視をどのタイプのコンタクトレンズで矯正しようかお悩みの方も、ぜひ参考にしてください。
まずは、近視で遠くがよく見えなくなる理由と、見づらい状態が続くと体にどのような影響がおよぶのかを知っておきましょう。
人間は、物を見るときに水晶体(レンズのような働きをする目の組織)の厚さをコントロールしてピントを合わせています。そして、物を鮮明に見るには、網膜(目の奥にある光を感知する神経の膜)にうまく焦点を合わせることが必要です。
この焦点が網膜の前方や後方にズレると物がうまく見えなくなり、近視は網膜の前方に焦点がズレている状態を指します。
近視になると、遠くの景色などは網膜にうまく焦点が合わないため、ぼやけてはっきり見えません。一方、近くは光が広がる方向で目に入ってくるので、焦点が後方に移動して網膜に近づきます。そのため、見づらさはあまり感じません。
水晶体の厚さを調節するのは、水晶体の周りにある小さな筋肉です。近視で物がよく見えない状態が続くと、水晶体の周りの筋肉が働いてピントを合わせようとします。すると、目に大きな負担がかかるため、眼精疲労の症状が出てくることもあります。
眼精疲労になると疲れ目だけではなく、肩こりや体の疲労感、めまい、頭痛、吐き気などが生じることもめずらしくありません。そのため、視力を矯正することは物を見やすくするだけではなく、体調の改善にもつながる可能性があります。
それでは、なぜ子どもの近視が増えているのでしょうか。近視の発症に関係すると考えられているのは、遺伝要因と環境要因です。
近視の遺伝に関する調査では、父母のどちらか一方が近視だと、父母とも近視でない場合と比較して、子どもが近視になりやすいことが示唆されています。
また、近年の子どもたちは、屋外で過ごす時間が減少し、スマートフォンなどで近くの物を見る時間が増えたといわれています。このような環境要因が、子どもの近視の増加に大きく影響していると考えられます。
近視の原因である遺伝要因は避けることが難しいですが、環境要因については対策を講じることが可能です。
ここでは、視力低下や近視の予防のためにできることを紹介します。
文部科学省の調査によると、屋外で過ごす時間が長い子どものほうが、屋外にほとんど出ない子どもより、視力低下のリスクが低いことが示されています。特に、屋外で過ごす時間が平日で90分以上、休日で120分以上になると、視力低下のリスクが低くなる傾向があることがわかっています。
したがって、子どもの視力低下を防ぐには、平日は学校の授業や休み時間、登下校を除いて1日1時間半以上、休日は2時間以上屋外で過ごす時間を作るようにしましょう。
なお、近視予防に必要な光の明るさはそれほど強いものではないため、直射日光が当たらない木陰などで過ごしても十分な効果が期待できます。
また、屋外で過ごす時間が2時間に満たない場合でも、近視の進行が抑制される可能性が複数の研究で示唆されています。そのため、子どもの近視抑制のためには、屋外で過ごす時間を意識して増やすべきでしょう。
視力低下や近視の予防のためには、近いところを見る時間を減らすことも大切です。勉強や読書、パソコンなどの操作で長時間机に向かう場合は、以下の点を意識しましょう。
室内を明るくする
パソコンやスマートフォンなどの画面を適切な明るさに調節する
本やパソコン、スマートフォンなどから目を30cm以上離す
30分に1回は休憩して、少なくとも20秒は目を休める
背筋を伸ばして、良い姿勢を心がける
学校の眼科健診などで視力低下を指摘されたら、早めに眼科を受診して詳しい検査を受けましょう。近視であれば、メガネやコンタクトレンズで矯正できます。
子どもの視力矯正におすすめしたいのが、コンタクトレンズです。コンタクトレンズには、メガネにはないさまざまなメリットがあります。
度数の強い近視用のメガネをかけると、物の大きさが実際よりも小さく見え、レンズの厚い部分では物が二重に見えることもあります。特に左右の視力差が大きい場合にメガネで矯正すると、それぞれの目で見える物の大きさに差が生じるため、眼精疲労をまねくおそれがあります。
対して、コンタクトレンズは目に直接装用するため物が自然に見え、大きさが変わって見えることもありません。左右の視力に差がある場合でも、コンタクトレンズなら問題なく矯正できます。
また、コンタクトレンズにはフレームがないため、メガネよりも視野を広く確保することが可能です。メガネとは異なり、呼気や汗、飲食物の湯気で曇ることがない点もメリットといえるでしょう。
さらに、ワンデータイプや2ウィークタイプ、マンスリータイプなどの使い捨てコンタクトレンズなら、買い増しや買い替えのタイミングで度数変更することもできます。子どもは成長とともに視力が変わることが多いため、度数変更しやすいコンタクトレンズは便利なアイテムといえます。
ハードコンタクトレンズは硬い素材でできているため変形しにくく、強い近視でも視力の矯正が期待できます。
また、レンズと角膜(黒目の部分)の間を涙液で満たし、黒目の表面の凹凸を補正するのにも適しています。そのため、ソフトコンタクトレンズでは難しい不正乱視や円錐角膜の矯正も可能です。
このようなことから、近視が強い方・不正乱視や円錐角膜のある方には、ハードコンタクトレンズによる視力矯正がおすすめです。
ソフトコンタクトレンズは軟らかく、しなやかな素材でできています。装用しても異物感が少なく、目になじみやすいのが特徴です。
レンズのサイズが角膜よりも少し大きいため、ハードコンタクトレンズよりズレにくく、運動時の使用にも適しています。
装用感も良く、部活動などで体を動かす機会が多い方はもちろん、コンタクトレンズが初めての方にもおすすめです。
一人ではうまくレンズケアができない小学生や、部活動や塾などで忙しくレンズケアに十分な時間が取れない方には、デイリーケアの必要がないワンデータイプのコンタクトレンズがおすすめです。
レンズの取り扱いに慣れてきた、あるいは、時間に余裕が生まれてレンズケアができるようになったら、1枚当たりの単価が安い2ウィークタイプやマンスリータイプのコンタクトレンズへの変更を考えてもいいかもしれません。
子どもの近視の増加には、子どもを取り巻く環境の変化が影響していると考えられます。近視はコンタクトレンズやメガネで矯正可能ですが、見づらい状態が続くと体にも不調が生じるおそれがあります。学校などで視力低下を指摘されたら早めに眼科を受診し、必要に応じて視力を矯正するようにしましょう。
なお、視力が変化しやすく、活動量が多い子どもの視力矯正には、コンタクトレンズがおすすめです。コンタクトレンズによる視力矯正を希望する場合は必ず眼科を受診し、医師の処方に基づいて適切な商品を購入しましょう。
更新日:2024/11/10