コンタクトレンズを購入するためには、度数やBC(ベースカーブ:レンズの曲がり具合)、DIA(レンズ直径)などのレンズデータが必要です。しかし、目に優しいコンタクトレンズを選ぶためには、「酸素透過率」にも注意しなければなりません。
それでは、酸素透過率はどうやって確認すればよいのでしょうか。
この記事では、コンタクトレンズの酸素透過率の重要性や、酸素透過率の低いレンズの危険性、目の酸素不足を防ぐ方法などを解説します。酸素透過率が高いコンタクトレンズのタイプや酸素透過率を確認する方法も紹介するので、購入時に役立ててください。
まずは、コンタクトレンズの酸素透過率がどのようなものかを知っておきましょう。
コンタクトレンズの「酸素透過率」とは、コンタクトレンズがどれくらい酸素を通すかを数値化したものです。
酸素透過率は、酸素透過係数(Dk:レンズ素材の酸素透過能力を表す数値)をレンズの厚さ(L)で割った値(Dk/L)で、数値が高いほど瞳に届く酸素の量が多くなります。
酸素透過率は製品ごとに異なりますが、目に負担の少ないコンタクトレンズを選びたいなら、酸素透過率が高い製品を選びましょう。
なお、終日装用に必要な酸素透過率は24.1以上といわれています。
ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズを比べた場合、酸素透過率が高いのはハードコンタクトレンズです。
ハードコンタクトレンズは酸素透過係数(Dk)の高い素材で作られている場合が多く、また、レンズ直径も小さいため、ソフトコンタクトレンズに比べて目にかかる負担は少なくなります。
ソフトコンタクトレンズの含水量で比較した場合、レンズ内の水分量が少ない低含水レンズより水分を豊富に含む高含水レンズのほうが酸素透過率は高くなります。これは、レンズ内の水分が多いと水に溶け込む酸素の量が多くなり、瞳に届く酸素の量も増えるためです。
また、従来からあるハイドロゲル素材のコンタクトレンズより、新素材であるシリコーンハイドロゲルでできたコンタクトレンズのほうが酸素透過率は高いです。シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズは低含水レンズに分類されますが、素材そのものが酸素を多く通すため、製品によっては裸眼に近い状態で過ごすことが可能です。
酸素透過率は、コンタクトレンズのパッケージや添付文書に記載されている「DK/L値」などで確認できます。
しかし、酸素透過率の表示は義務付けられているわけではありません。そのため、通販サイトなどでは商品説明ページにDK/L値が表示されていないこともあります。
パッケージ画像が掲載されていれば確認できることもありますが、どうしてもわからない場合は販売店に直接問い合わせて確認しましょう。
酸素透過率が低いコンタクトレンズを使用すると、目が酸素不足の状態になります。
それでは、目に十分な酸素が供給されなくなると、どのような弊害が生じるのでしょうか。
角膜(黒目の部分)に届けられる酸素の量が減ると、角膜の一番内側にある角膜内皮細胞の数が減ってきます。
角膜内皮細胞は、眼球内の水分が角膜にたまりすぎるのを防ぎ、角膜の透明性を保つ役割を果たしている重要な組織です。しかし、角膜内皮細胞には再生能力がないため、一度減ったらもとに戻すことはできません。
そして、目の酸素不足などが原因で角膜内皮細胞の数が極端に減ると、角膜に水分が侵入して角膜の透明性を維持できなくなります。角膜が白く濁ると急激に視力が低下し、失明に近い状態になる場合も珍しくありません。
また、角膜内皮細胞の数が少なくなると、将来白内障などの手術ができなくなるおそれもあります。
なお、角膜内皮細胞を再生させる治療法は今のところありません。したがって、症状が進行した場合は手術が必要になります。
目の黒目の部分(角膜)には血管がありません。そのため、通常は涙を介して空気中の酸素を取り入れています。また、ごくわずかですが、白目の部分(結膜)や目の中を満たしている水分(房水)からも酸素が供給されています。
しかし、酸素透過率の悪いコンタクトレンズを装用すると、角膜に十分な酸素が供給されません。すると、角膜に酸素を届けるために血管が拡張して、目が充血するようになります。そして充血が続くと、白目の部分から角膜に向かって血管が侵入してきます。これが「新生血管」です。
ごく初期の新生血管であれば、コンタクトレンズを酸素透過率の高い製品に変えるだけで治ることもあります。しかし、症状が重くなるとコンタクトレンズを変えても血管が消失しません。
また、新生血管が角膜の中心まで伸びてくると、視力が低下する場合もあります。
酸素透過率の悪いコンタクトレンズを使い、目が酸素不足の状態になると、角膜の代謝が低下して傷が付きやすくなります。抵抗力も落ちるため、感染症にかかるリスクも否定できません。角膜潰瘍などの重篤な眼疾患をまねく危険性もあります。
特に角膜感染症は、原因によっては有効な治療法がなく、完治するまでに長期間かかる場合も少なくありません。また、治療しても角膜に傷が残ると視力障害が残るおそれがあり、場合によっては角膜移植が必要になることもあります。
ここからは、目の酸素不足を防いで、コンタクトレンズをより快適に使う方法を解説します。
コンタクトレンズは、酸素透過率の高い製品を選びましょう。
ただし、酸素透過率は表示義務がないため確認できない場合があります。販売店やメーカーに問い合わせても酸素透過率がわからない場合は、念のため購入を避けるほうがよいかもしれません。
なお、終日装用する場合は、Dk/L値が24.1以上のものを選んでください。Dk/L値が80以上なら、裸眼を100%とした場合の97%ほどの酸素を通してくれます。
ソフトコンタクトレンズやカラコンは、低含水でありながら酸素透過率が高いシリコーンハイドロゲル素材の製品がおすすめです。
酸素透過率だけに着目するのなら高含水レンズでもよいのですが、高含水レンズは目の乾燥をまねきやすいというデメリットがあります。したがって、ドライアイの方や長時間装用が多い方にはおすすめできません。
目の酸素不足を防ぎたいなら、レンズ直径(DIA)にも注意が必要です。
DIAが大きくなるとコンタクトレンズが角膜を覆う範囲が広くなるため、酸素が不足しやすくなります。そのため、目の健康を考えるならDIAの小さなコンタクトレンズを選ぶのがおすすめです。
もっとも、カラコンについてはDIAが小さくなると着色直径も小さくなるため、抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、最近はDIAが小さくても、目力を強調できる製品や目を大きく見せる効果が期待できる製品も多数販売されています。
したがって、「小さい=盛れない」わけではないので、一度検討してみてください。
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目の酸素不足を防ぐためには、コンタクトレンズの長時間装用を避けることも大切です。
たとえ酸素透過率が高くDIAの小さいコンタクトレンズを使っていても、装用時間が長くなると目に届く酸素の量が少なくなるため、角膜障害などが生じるリスクが高まります。
このようなリスクを避けるためにも、コンタクトレンズの装用時間は必ず守ってください。可能なら装用時間を短くして、目にかかる負担をできるだけ減らすようにしましょう。
コンタクトレンズのケアが不十分で汚れが蓄積すると、酸素透過率が低下することがあります。そのため、コンタクトレンズの酸素透過率を維持するためには、デイリーケアで汚れをしっかり落とすことが大切です。
コンタクトレンズに汚れが残っていると、目の傷や感染症のほか、ドライアイやアレルギー症状をまねくリスクも高くなります。コンタクトレンズの酸素透過率を保ち、目の健康を維持するためにも、デイリーケアに自信がない場合はワンデータイプのコンタクトレンズの使用も考えてみましょう。
酸素透過率は、コンタクトレンズが酸素をどれくらい通すかを表す数値です。数値が高いほど目に届く酸素の量が多くなるため、「酸素透過率=瞳への優しさを表す数値」といってもいいかもしれません。
目の健康を守ってコンタクトレンズを快適に使うためには、酸素透過率が高い製品を選び、適切に取りあつかうことがとても大切です。しかし、眼障害を防ぐためには眼科への定期受診も忘れてはいけません。
3ヵ月に1回は眼科を受診して、目の健康を維持しながらコンタクトレンズライフを楽しみましょう。
公開日:2023/11/30