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片目だけ視力が悪くなるのはなぜ?おもな原因と対処法を解説

ヒトは、左右の目を使って物を見ます。そのため、左右の視力差がないほうが良いのですが、左右の視力がまったく同じ方はほとんどいません。

それでは、左右の視力に差があってもそのままにしておいて良いのでしょうか。答えは「NO」です。

左右の視力が極端に違う場合、放っておくと左右の視力差がさらに大きくなることがあります。また、病気が原因で左右の視力が違う場合、放置すると失明するリスクもあるため、早急に何らかの対処をしなければなりません。

では、片目だけ視力が悪いことに気付いたらどうするべきなのでしょうか。

今回は、片目だけ視力が悪くなるおもな原因に迫り、左右の視力差を少なくする有効な対処法を紹介します。

■片目だけ視力が悪いとどうなる?

片目だけ視力が悪いと、物がうまく見えなくなるだけでなく、体全体の調子が悪くなることがあります。また、片目だけ視力が悪い状態を放置すると、視力差がさらに大きくなるリスクもあるため、注意が必要です。

◇立体感や遠近感がつかみにくくなる

ヒトは、左右の目で物を見て立体感や遠近感を把握しています。

しかし、左右の視力が大きく違うと、無意識のうちに視力の良いほうの目だけで物を見るようになるため、立体感や遠近感をうまくつかめません。

このような見え方の不自由さは、左右の視力に差があるほど大きくなるといわれています。

◇目が疲れやすくなる

視力が左右で大きく異なると、左右の網膜にうつる「像」の大きさにも差が出てきます。そして、網膜にうつる「像」の大きさが左右で違うと、脳が情報をうまく処理できず、そのストレスを「疲労」として感じることもあるのです。

さらに「疲労」が続くと、めまいや頭痛、肩こりや吐き気などを感じることもあります。

◇放置すると、左右の視力差がさらに大きくなることに……

ヒトは左右の視力が大きく異なると、視力の良いほうの目で遠くを見て、視力の悪いほうの目で近くを見るようになります。これは、片目で物を見るほうがピントを合わせやすいためです。

しかし、視力の悪いほうの目は常に近くを見ることになるため近視が進み、視力の良いほうの目は遠いほうを見るため近視にはなりません。

このように、片目だけ視力が悪い状態を放置すると、左右の視力差がさらに大きくなるおそれがあるのです。

■片目だけ視力が悪い……考えられるおもな原因

片目だけ視力が悪い場合に考えられるおもな原因は、ストレスや生活習慣、遺伝的な要素、目の病気などです。原因によっては失明につながることもあるため、片目だけ視力が悪いことに気が付いた場合は、早めに眼科を受診しましょう。

◇ストレスや目の使い過ぎ

ストレスが原因で、片目の視力が低下することがありますが、ストレスによる視力低下は一過性の場合がほとんどです。この場合、原因となっているストレスがなくなれば数日で視力は戻るといわれており、症状が一時的であればそれほど心配はありません。

また、片目だけを使い過ぎた結果、左右に視力差があらわれることもあります。例えば、横になって片目だけでスマートフォンを見続けていると、目のピント調節をする筋肉がうまく機能しなくなってしまい、一時的に片目の視力が低下することがあります。

◇目の大きさや形に差がある

一時的ではない左右の視力差は、左右の目の大きさや形の違いが原因かもしれません。

目に取り込まれた光は、角膜と水晶体を通って屈折し、網膜に像を映し出します。しかし、成長による変化や遺伝的な理由で左右の目の大きさや形に差異が生じると、見え方にも違いが生じます。

特に近視は遺伝の影響が大きいため、両親のどちらかが片目だけ視力が悪いと、子どもの視力も片目だけ悪くなることがあるようです。

◇目の病気

片目だけ視力が悪い場合に、特に注意しなければならないのが目の病気です。

片目だけ視力が悪くなる場合に考えられる目の病気には、以下のようなものがあります。

網膜剥離

眼底にある網膜がはがれてくる病気。放置すると失明することもある。

視力低下に加え、飛蚊症(視界に黒い虫のようなものが動いて見える症状)や視野の欠けがあらわれることもある。

初期であればレーザー治療で治るが、進行すると手術が必要。

ぶどう膜炎

虹彩(瞳孔の大きさを調節する組織)、毛様体(水晶体の厚みを調節する組織)、脈絡膜(網膜に栄養を届ける組織)に炎症が起きる病気。失明に至ることもある。

視力低下だけではなく、目の痛みや赤み、目のかすみ、物がゆがんで見えるなどの症状があらわれることもある。

原因や症状に応じて、点眼薬や飲み薬、点滴などで治療する。

緑内障

視神経が障害されて視野が欠ける病気。治療が遅れると失明することもある。

急激な視力低下のほか、視野の欠け、目の痛み、頭痛、吐き気などをともなうこともある。

目薬で治療できる場合もあるが、タイプによってはレーザー治療や手術が必要になる。

白内障

水晶体が白く濁って視力が低下する病気。アトピー性皮膚炎や外傷、紫外線などが原因になる場合もある。放置すると失明するリスクも否定できない。

視力が落ちるだけではなく、物がぼやけて見えたり視界がかすんだり、まぶしさを感じたりすることがある。

目薬で進行を遅らせることはできるが、水晶体の濁りをもとに戻すことはできない。進行した白内障は、外科手術で治療する。

片目だけ視力が低下する背景には、このような病気が潜んでいるかもしれません。視力の低下や気になる症状がある場合は、早めに眼科を受診するようにしましょう。

■片目だけ視力が悪い場合の対処法

片目だけ視力が悪い原因が病気にある場合は、病気の治療が最優先です。失明を防ぐためにも、必ず治療を受けてください。

一方、病気が原因でない場合は、視力矯正で対処することになるでしょう。ここからは、片目だけ視力が悪い場合に検討したい視力矯正方法をいくつか紹介します。

◇メガネを使用する

片目だけ視力が悪いものの、左右の視力にそれほど差がない場合はメガネで見え方を調節できます。

しかし、左右の視力の差が大きい場合は注意が必要です。片目だけ視力が極端に悪いと、左右のレンズの厚さを大きく変えなければなりません。また、メガネのレンズは目から離れているため、メガネを通った光が目に届くまでに像が縮小、あるいは拡大されます。すると、左右の網膜にうつる像の大きさが相当異なってしまうため、メガネをかけても納得のいく視力矯正にならないかもしれません。

そのため、左右の視力の差が大きい場合は、片目だけ視力矯正できる別の方法を考えるべきでしょう。

◇片目だけコンタクトレンズを使う

片目の視力が極端に悪い場合は、片目だけコンタクトレンズを使うのも方法の一つです。

メガネと違ってコンタクトレンズは目に直接装用するため、像が縮小・拡大されることがなく、見え方に左右差が起きることもほとんどありません。また、コンタクトレンズはメガネと異なり、片目だけでも使用可能です。

そのため、左右の視力の差が大き過ぎてメガネではうまく矯正できない場合は、片目だけコンタクトレンズを使用することも考えてみましょう。

◇手術をする

「メガネやコンタクトレンズを使わず、裸眼で過ごしたい」という場合は、レーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)も選択肢になるかもしれません。

レーシックは、レーザーを角膜に照射して形状を整え、視力を矯正する手術です。ただし、一度手術をしたら角膜をもとの状態に戻すことはできません。また、角膜が薄い場合や強度の近視の場合は、手術を受けられないこともあります。

ICLは、目の中に人工の小さなレンズを入れる手術です。ICLは、レンズを取り出せばもとの状態に戻すことが可能で、強度の近視や遠視でも手術できる場合があります。

しかし、レーシックもICLも保険が適用されない自由診療なので、それなりの費用が必要です。また、手術である以上、合併症や感染症などのリスクもゼロではありません。

レーシックやICLを希望する場合は、主治医からきちんと説明を受け、メリットだけではなくデメリットもしっかり理解したうえで、手術を受けるかどうかを決めてください。

◇オルソケラトロジーで視力矯正する

「手術は受けたくないが、できるだけ裸眼で過ごしたい」という場合は、オルソケラトロジーによる視力矯正も考えてみましょう。

オルソケラトロジーは、寝ている間に特殊なハードコンタクトレンズを装用して、近視を改善したり進行を予防したりする治療です。ただし、オルソケラトロジーで矯正できる近視の範囲は限定されています。強度近視や乱視に対しては十分な効果が期待できない場合もあるため、過信は禁物です。

なお、オルソケラトロジーも自由診療です。また、レーシックやICLとは異なり、継続的な受診が必要で、レンズケアもしなければなりません。そのため、比較的時間に余裕のある方向けの治療といえます。

■まとめ

今回は、片目だけ視力が悪くなるおもな原因と対処法を解説しました。

片目だけ視力が悪くなる原因はいろいろありますが、おもなものは目の使い過ぎやストレス、成長にともなう変化や遺伝の影響、病気などです。特に、病気が原因の場合は失明のリスクもあるため、早急に治療しなければなりません。

病気以外の原因で左右の視力に差がある場合は、手術やオルソケラトロジーなどさまざまな方法が選択肢になりますが、おすすめはコンタクトレンズです。

コンタクトレンズなら、メガネと異なり片目の視力が極端に悪い場合でも矯正可能で、手術にともなうリスクもありません。また、コンタクトレンズを処方してもらう際の診察には保険が適用されるため、経済的な負担も抑えられます。

片目だけ視力が悪いことに気が付いたら早めに眼科を受診し、症状に応じて目に合うコンタクトレンズを処方してもらいましょう。

公開日:2023/4/6