学校や仕事から帰ってきて、うっかりコンタクトレンズを外さずに寝てしまった経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
しかし、コンタクトレンズをつけたまま寝るのはとても危険です。そのまま寝てしまうと、レンズが目に貼り付いたり、目の病気になったりする可能性も否定できません。
そこでこの記事では、コンタクトレンズを外さずに寝ると目やレンズがどのような状態になるのか、どのようなトラブルが生じやすいのかを解説します。記事の最後に、コンタクトレンズを外さずに寝てしまった場合の対処法も紹介しますので、万が一のトラブルに備え、確認しておいてください。
コンタクトレンズを外さずに寝てしまうと、目の酸素不足や乾燥をまねくおそれがあります。
そもそも、角膜(黒目の部分)には血管がありません。そのため、酸素を補うには、涙に含まれる酸素を吸収するか、空気中の酸素を直接取り込む必要があります。一方、寝ている間は目を閉じるため、まぶたの裏に張り巡らされている血管から酸素を取り込まなくてはなりません。
しかし、コンタクトレンズを装用したまま寝てしまうと角膜がレンズで覆われてしまい、空気からも血管からも酸素を取り入れるのが難しくなります。また、眠っている間は涙がほとんど分泌されないので、涙から満足な量の酸素を吸収することもできません。
加えて、寝ていると目の表面がだんだん水分不足になってきます。涙の量が少なくなると、コンタクトレンズの乾燥も避けられません。特に、ソフトコンタクトレンズは乾燥がひどくなると使えなくなる場合もあるため、注意が必要です。
このような理由から、コンタクトレンズをつけたまま寝るのは、目にもレンズにも危険なことといえます。
コンタクトレンズをつけているときは、短時間の昼寝や仮眠も避けなければなりません。「短い時間なら大丈夫でしょう?」と思うかもしれませんが、たとえ短時間でもコンタクトレンズを装用したまま寝てしまうと、目に大きなダメージが生じます。
それでは、いったいどのようなトラブルが起きるのか、具体的に見ていきましょう。
就寝中は涙の分泌量が減り、まばたきによる涙の交換もとどこおるため、目の汚れや分泌物が十分に洗い流されません。コンタクトレンズをつけたまま寝て、レンズや目に残った雑菌が繁殖すると、痛みが生じたり目やにが増えたりする場合があります。
また、目の酸素不足や乾燥が白目やまぶたの裏の充血をまねくこともあり、注意が必要です。
コンタクトレンズを外さずに眠ってしまうと、寝ている間にレンズの位置がずれたりまぶたの裏側に入り込んでしまったりすることもあります。これは、眠っている間に眼球が動くことが原因です。
また、コンタクトレンズを装用したまま寝てしまうと、乾燥でレンズが眼球に貼り付くこともあります。レンズが目にぴったり貼り付いてしまうと、目薬などで目を潤してもなかなか外れません。
コンタクトレンズを外さずに寝てしまい、涙の量が少なくなると、目に十分な酸素や栄養が行きわたらなくなるため、角膜がダメージを受けやすくなります。また、涙の不足によってレンズと眼球との間で摩擦が生じやすくなり、角膜が傷付くこともあります。
乾燥で目に貼り付いたコンタクトレンズを外す際にも、注意が必要です。無理やりコンタクトレンズを剥がそうとすると、角膜を傷付けたりレンズを破損したりすることもあります。
コンタクトレンズを外さずに眠ってしまうと、感染症にかかるリスクも高まります。
これは、目の酸素不足により角膜表面のバリア機能が低下すること、涙の量の減少によりコンタクトレンズに付着した汚れが洗い流されなくなることなどが原因です。
実際、コンタクトレンズをつけたまま寝てしまったために感染症を起こし、角膜に潰瘍ができた事例もあります。
細菌性角膜炎や角膜潰瘍は、失明を引き起こすこともある重大な病気です。このような病気にかかるリスクを抑えるためにも、コンタクトレンズを装用したまま寝るのは避けなければなりません。
コンタクトレンズをしたまま眠ってしまうと、角膜内皮細胞(黒目の一番内側の細胞)にもダメージを与えるおそれがあります。
角膜内皮細胞は、目の呼吸や代謝の役割を担い、角膜の透明性を維持している重要な細胞です。酸素が不足すると減少し、二度と元の状態には戻りません。角膜内皮細胞の数が少なくなると目の呼吸や代謝がスムーズに行なわれず、角膜の透明度が失われるために視界が悪くなることもあります。
コンタクトレンズをしたまま寝てしまう時間が長くなればなるほど、角膜内皮細胞が失われる速度も速まるため、寝るときには必ずレンズを外しましょう。
目の酸素不足や乾燥は、ドライアイや眼痛をまねくこともあります。また、コンタクトレンズをしたまま眠ってしまうと、以下のような眼障害が生じることもあるため、注意しましょう。
・アレルギー性結膜炎
コンタクトレンズの汚れなどによる物理的な刺激が原因とされる病気です。目のかゆみのほか、まぶたの裏側にブツブツとした突起ができて、コンタクトレンズが頻繁にずれたり目に違和感を覚えたりすることもあります。
・瞼裂斑炎(けんれつはんえん)
涙液不足による乾燥が原因となって生じる眼障害です。白目の部分に水疱ができ、その周りが充血します。
・眼瞼下垂(がんけんかすい)
コンタクトレンズをしたまま眠ってしまうなど、目に負担がかかる生活習慣が原因の眼障害です。上まぶたが下がってくる・まぶたが開けにくくなる、などの症状が見られます。
眼障害のなかには、無自覚・無症状のものもあります。気になる異常がない場合でも、寝るときにはコンタクトレンズを必ず外すようにしてください。
ここからは、コンタクトレンズを外さずに寝てしまった「あと」の対処法を紹介します。
コンタクトレンズを装用したまま寝てしまった場合は、まずレンズを外してください。ただし、いきなり外そうとしてはいけません。乾燥でレンズが目に貼り付いていることもあるため、ゆっくりとまばたきをして、涙で目を潤してから外しましょう。
まばたきを繰り返しても乾燥感がある場合は、コンタクトレンズ用の目薬を使ってください。目が十分に潤い、レンズの動きが良くなったら、コンタクトレンズを外しても大丈夫です。
なお、外れないからといって、水道水を用いて洗い流そうとするのはおすすめできません。コンタクトレンズをつけたまま寝たあとは、目が酸素不足・涙不足で弱った状態になっており、水道水に含まれる塩素で目が傷付いたり、雑菌による感染症にかかったりするリスクが上昇します。せっかく分泌された涙が洗い流されることにもなるため、水道水を使って外すのは極力避けてください。
コンタクトレンズを外したあとは、酸素不足や涙不足でダメージを受けている目をしっかり休ませてください。視力矯正が必要な場合は、コンタクトレンズではなくメガネを使いましょう。
使っているコンタクトレンズがワンデータイプの場合は、外したあとそのまま捨ててください。たとえ汚れていないように見えても、あるいは装用時間が短くても、一度外したレンズは安全面に問題があるため、再使用できません。
2ウイークやマンスリーなどの定期交換タイプ、長期間使用できるコンベンショナルレンズは、こすり洗いを併用して汚れを落とし、新しい保存液のなかで保存してください。汚れがひどい場合は、必要に応じてタンパク除去も行ないましょう。
なお、洗面器に水道水を張ってレンズを外した場合、ソフトコンタクトレンズは使用期間が残っていても必ず廃棄してください。水道水に浸したレンズは、浸透圧の影響で変形したり、塩素や雑菌などで汚染されていたりするおそれがあります。
ハードコンタクトレンズは水道水に浸しても使用できますが、洗浄や保存は専用のケア用品を使ってください。
寝て起きたあと、目を潤してもコンタクトレンズが外れない場合は、早めに眼科を受診しましょう。レンズを無理やり剥がそうとすると、角膜表面を傷付けるおそれがあります。
うまく外せた場合でも、寝ている間に目に大きな負担がかかっていたことは否定できません。痛みや充血など気になる症状がなくても、念のため眼科を受診して目の状態を確認してもらい、コンタクトレンズの装用が可能かどうかを見てもらうと安心です。
今回は、コンタクトレンズをつけたまま寝ることの危険性を解説しました。
目の健康を守るために、寝る前にコンタクトレンズを外すことはとても大切です。
外さずに寝てしまうと、目に供給される酸素の量が減るだけでなく、目やレンズが乾燥するリスクも高まります。また、目が傷付いたり感染症にかかったりするリスクもあるため、注意が必要です。
たとえ昼寝や仮眠のような短時間の睡眠でも、コンタクトレンズをつけたまま寝てしまうと目に大きな負担がかかります。コンタクトレンズをつけたまま寝てしまい、外したあとに違和感や痛みなどが残る場合は、早めに眼科を受診しましょう。